期外収縮とは?
不整脈の中でも最も頻度が高い不整脈が期外収縮です。「期外」というのは「正常な脈拍のタイミングからずれて」という意味であり、そのタイミングに不整脈がおきて心臓が「収縮する」ため、「期外収縮」という名前がついています。
期外収縮には大きく2つのタイプがあり、心臓の上の部屋である「心房」からおきる「心房性期外収縮」と、心臓の下の部屋にある「心室」からおきる「心室性期外収縮」があります。
丸で囲んだ以外の波形が正常の波形。丸で囲んだ波形は、通常の波形から短い時間で脈打っており、収縮である。
期外収縮はどちらの場合でも少数であれば、健常人でもみられますので、心電図で記録されたとしても、直ちに異常もしくは治療対象となるわけではありません。
どのような症状がおきるの?
心臓が本来のタイミングと異なったところで心臓が脈を打つので、「脈がとぶ」、「胸がドキッとした」、「ふらつく」といった症状を訴えることが多いですが、症状が全くなく、健康診断や聴診で指摘されることも多くあります。
どのように診断するの?
診断は心電図検査で容易に診断できます。
ただし心電図検査は数秒しか記録しないため、期外収縮がどの程度の頻度で出現しているか、また続けて出ていないかなどを判断することはできません。そのため24時間の波形を記録するホルター心電図をします。または動悸がしたときにボタンを押して心電図が記録できる、イベントモニター心電図で期外収縮が出現しているかを記録します。
他に検査は必要なの?
不整脈をおこすような心臓の異常があるかチェックするため、心臓エコー検査をします。また不整脈の薬が必要な場合は用量を調整するため、採血で腎臓の機能をチェックします。
治療は必要なの?
期外収縮はホルター心電図や心臓エコー検査の結果をもとに治療をしない、もしくは安定剤で様子を見ることもあります。
治療が必要な場合、上室性期外収縮と、心室性期外収縮ではことなるため、分けて説明いたします。
1.上室性期外収縮の場合
上室性期外収縮が原因考えられる症状(動悸や息切れ)がある場合は、βブロッカーは脈拍を抑える働きがあり、症状によっては第一選択とします。またカフェインやアルコールとの関連も認められるため、これらを多く摂取している場合は、量を減らしていただくことが有効なこともあります(1)。症状が軽い場合には安定剤でまず様子をみさせていただくこともあります。
上室性期外収縮は心臓に負担をかけたりすることはあまりなく、健常人でも9割近くの方にみられる不整脈ではありますが、一日に出現する回数が1000回より多い場合、心房細動を発症するリスクが高まり、注意深い観察が必要という報告もあります(2,3)。
2.心室性期外収縮の場合
心室性期外収縮も動悸、息切れなどの症状がある場合、まずは治療対象となります。
他に治療を考慮する心室性期外収縮には以下のような場合があります。
✔︎ 運動負荷試験で増悪する場合
✔︎ 期外収縮が2回以上、続けて起きる場合
✔︎ 1日におきる期外収縮の数が総心拍数の10%以上のとき
✔︎ 2種類以上の異なる波形の心室性期外収縮がみられる場合
✔︎ 心筋梗塞や心筋症など、心臓の基礎疾患を持っている場合
どのような治療があるの?
心臓に基礎疾患がない場合はβブロッカーやカルシウムチャネルブロッカーという、心臓
の脈拍をおさえる薬を使用します。
心臓に基礎疾患がある場合はやβブロッカーやアミオダロンという不整脈を止める薬を使いことがあります。
薬以外の治療方法としてカテーテルアブレーション治療があります。これはカテーテルという、医療用の細い管を使用して、不整脈を起こしている心臓の筋肉を低温で火傷させることにより、不整脈を止める治療方法です。
よくある質問
- 期外収縮はどんな時におきやすいですか?
- ストレス、疲れ、コーヒーやアルコールの飲み過ぎ、風邪や脱水などでおきやすくなります。
- どんなときに病院に行けばいいの?
- 動悸が1日に何度も起きる、失神することがある、胸の痛みを伴う、もともと心臓に持病があり、期外収縮を初めて指摘された場合などは早めに当院までご相談ください。
参考文献
1: https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
2: Gladstone DJ, Dorian P, Spring M, Panzov V, Mamdani M, Healey JS, Thorpe KE; EMBRACE Steering Committee and Investigators. Atrial premature beats predict atrial fibrillation in cryptogenic stroke: results from the EMBRACE trial. Stroke. 2015 Apr;46(4):936-41.
3: Kochhäuser S, Dechering DG, Dittrich R, Reinke F, Ritter MA, Ramtin S, Duning T, Frommeyer G, Eckardt L. Supraventricular premature beats and short atrial runs predict atrial fibrillation in continuously monitored patients with cryptogenic stroke. Stroke. 2014 Mar;45(3):884-6.