動悸とは
「胸がドキドキする」
「心臓がドクン、とする」
「脈がとぶ感じがする」
「一瞬、息が止まります」
不整脈の患者様はこのような症状で病院を受診されるかたが多いです。動悸がすると「心臓に異常があるのではないか?」、と過度に心配されるかたが多いです。しかし、適切な検査をして原因が判明すれば、薬物やカテーテルアブレーション治療が有効とされる場合があります。過度に心配する必要はございません。まずはお早めにご相談ください。
動悸がする主な原因として「不整脈」があります。
どんな不整脈があるの?
人の心拍は心臓が規則正しく、1分間におよそ50-100回うつのが正常とされています。
不整脈には大まかに
✔︎ 脈は規則正しいが、早すぎる(1秒間に100回より多い)
✔︎ 脈拍数は正常もしくは異常であり、脈がとぶ、またはバラバラである
✔︎ 脈は規則正しいが、遅すぎる(1秒間に50回未満)
というように分類できます。それぞれの種類に該当する不整脈をまとめると下のようになります。
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脈は規則正しいが、早すぎる
洞性頻脈
発作性上室性頻拍
心室頻拍
心房頻拍 -
脈拍数は正常もしくは異常であり、脈がとぶ、またはバラバラである
心房細動
洞不整脈
上室性期外収縮
心室性期外収縮
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脈は規則正しいが、遅すぎる
洞性徐脈
この中で頻度が多いものについていくつか解説いたします。
1.期外収縮
頻度として、一番おおくみられる不整脈です。期外収縮とは「正常な脈拍の間に割り込むような形で入る」不整脈です。動悸症状で受診される、または健康診断で指摘されて受診されるかたが多いです。治療が必要なものと、そうでないものがあります。
詳しくは「期外収縮」のページを参照してください。
2.心房細動
これもまた、動悸でクリニックを訪れる患者様に比較的多くみられます。放置しておくと脳梗塞や心不全となる可能性があるため、早めの治療が良いです。
詳しくは「心房細動」(リンク)のページを参照してください。
3.発作性上室性頻拍
生まれつき、心臓の脈を伝える回路で一部だけ、通常の人とことなる部位があるため、心拍数にしておよそ150-180/分程度の規則正しく、早い脈動悸が突然始まり、短いと数分、長いと1日ほど続くことがありますが、突然、正常の脈拍に戻ります。
発作時または発作予防にお薬を内服、また薬の効果がよわいかたや、薬を飲みたくないかたはカテーテルアブレーション治療が効果的です。
不整脈ではなくても動悸はするの?
動悸がお悩みで受診され、検査の結果、不整脈が全くないことはあります。
不整脈以外で動悸がする原因
- 自律神経の乱れ
ストレス、睡眠不足、過労や不規則な生活などが原因で自律神経のバランスが崩れ、動悸や眩暈、頭痛などの症状を引き起こすことがあります。
- 甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンの過剰な分泌により、動悸、体重減少、発汗や手の震えなどの症状が現れることがあります。
- 貧血
血液中のヘモグロビンが不足すると酸素が不足する状態となり、それを補うために心臓がいつもより早く脈を打たないといけなくなり、動悸を感じることがあります。
- 低血糖
血糖値が低下すると動悸、冷や汗や手足の震えなどの症状をきたすことがあります。
- 薬の副作用
一部の薬(気管支拡張薬、甲状腺ホルモン剤など)には副作用として動悸を起こすことがあります。
- パニック障害・不安障害
精神的な突然の動悸や息苦しさ、胸痛を感じることがあります。
その場合、原因はストレスや不安であることが多いです。ただし、しっかりと検査をした上で、「動悸の原因は見つからなかったので、大丈夫ですよ」とお話をすると、多くの方がその後、動悸が軽減する、もしくは動悸がなくなるかたも少なからずいます。不整脈がない動悸でも、当院ではひとりひとりにあわせた検査や処方をいたしますので、お気軽にご相談ください。
当院での動悸に対する診察の流れ
1:問診
・いつから動悸がしますか?
・どのような時に動悸がしますか?
・どのような動悸を感じますか?
・どれくらい続きますか?
・週に何日ほど動悸を感じますか?
・動悸以外に何か症状はありますか?
他にはこれまでの病気や飲んでいるお薬についてお尋ねします。
2:診察
血圧測定や心臓の聴診を行います。
3:検査
- 心電図検査
心臓の電気の流れを記録し、不整脈の有無を確認します。記録中に動悸を感じるかどうかも確認します。
- ホルター心電図(24時間心電図)
受診いただいたときには通常、動悸を感じていないかたが多いです。普段通りの生活をしていただきながら、24時間心電図を記録します。動悸を感じる頻度が1週間に3-4日以上程度あれば、ホルター心電図をご提案させていただきます。入浴時以外は通常通り過ごせます。
- イベントモニター心電図
こちらは自宅の持ち帰っていただき、症状が出現した際に患者様ご自身が記録を開始する携帯型の心電図です。発作の頻度が週1-2回程度の場合、ホルター心電図ではせっかく検査を受けていただいたのにも関わらず、症状が出現しなかったという事態が起きる可能性が高いため、イベントモニター心電図の方が適しています。
- 心臓エコー検査
超音波を用いて心臓の形、大きさ、血液の逆流やポンプ機能などがリアルタイムで把握できる重要な検査です。痛みは全くありません。
- 血液検査
貧血や甲状腺機能、腎臓や肝臓の機能を調べます。
4:治療
治療は動悸の原因がストレスや睡眠不足、貧血や甲状腺機能の亢進など、不整脈以外であれば、原因に対する治療を行います。
薬物療法:原因が不整脈であれば抗不整脈薬(βブロッカー、Ic群抗不整脈、アミオダロンなど)でコントロールします。
カテーテルアブレーション治療
薬物療法で効果が乏しいまたは一部の不整脈(発症早期の心房細動、発作性上室性頻拍、WPW症候群など)ではアブレーション治療で根治が期待できます。カテーテルアブレーション治療は足の付け根から細い医療用の管であるカテーテルを心臓まで通し、心臓で不整脈を起こしている電気の回路を低温で焼却する治療です。近隣の経験が豊富な施設へと紹介いたします。治療後は当院でのフォローアップをいたします。
当院の強み
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循環器内科専門医
院長は循環器内科専門医であり「心臓のことは専門医にまかせたい」という皆様の期待に応えさせていただきます。 -
検査で原因を特定
動悸の原因を特定するための心電図、ホルター心電図、イベントモニター心電図、心臓エコー検査や血液検査を施行することができます。 -
専門施設との連携
テーテルアブレーションやペースメーカー植え込みなどのより専門的な治療が必要な場合は、近隣の専門施設へとスムーズに紹介いたします。必要に応じて近隣の専門施設と連携し、治療後もフォローアップを行います。 -
患者さんに寄り添う丁寧な説明
「説明を聞いたけどよくわからなかった」という経験はございませんか?当院では専門用語はなるべく避け、わかりやすく丁寧な言葉で患者様の理解を確認しながら、病状、検査結果や治療内容についてご説明いたします。どんな疑問や不安でも、遠慮なくご質問ください。
よくある質問
- 動悸で受診を考えています。どんな準備をして受診すれば良いですか?
- いつから、どんな時に、どんな動悸がするのかをメモしていただけると診察がスムーズに進みます。また動悸がした際、ご自身の手首で親指側にある動脈を触れて、心拍数やどういった感じで不規則であったかを確認していただけると大変参考になります。あとは過去の健康診断の結果やあればお薬手帳のご準備をお願いいたします。
- 動悸がします。すぐに病院へ行くべきでしょうか?
- 動悸の原因が不整脈であるのかどうか、また不整脈であるとしたらどのタイプの不整脈であるのかがわかることがその後の治療に非常に重要であるため、可能であればすぐに最寄りのクリニックや病院で、症状があるうちに心電図を記録してもらいましょう。あとは高血圧や糖尿病、心臓に持病がある方、動悸が頻繁に起きる、息切れや胸痛伴うものであれば早めの受診をお勧めいたします。
- 動悸の原因が不整脈であった場合、薬は一生飲み続けなければならないでしょうか?
- 不整脈の種類や程度により異なってくるため一概には申し上げられませんが
・不整脈の出る原因が甲状腺機能の亢進や貧血、ストレスなどであれば、その原因に対する治療をすれば不整脈の薬は中止できる可能性があります。
・動悸の原因が不整脈であっても症状のコントロールが良好であれば、薬の減量や中止できる可能性はあります。
・動悸の原因が心房細動であり、脳梗塞のリスクが高ければ動悸のコントロールがついても血液をサラサラにする薬は内服を続けた方が良いです。
・動悸の原因がカテーテルアブレーションで根治の期待できる不整脈であり、カテーテルアブレーションが成功すれば、内服は中止しても良いと思います。