脂質異常症とは簡単に申し上げると、「コレステロールや中性脂肪の値が高い」という状態です。自覚症状は基本的になく、血圧と違い会社やジムで気軽に測定できるというものでもないため、健康診断で指摘を受けて受診される方がほとんどです。
脂質異常症とは?
高い脂質の種類により、大きく以下のように分類されます。
✔︎ 高LDLコレステロール血症:いわゆる悪玉コレステロールが高い状態。
✔︎ 高トリグリセリド血症:トリグリセリドが高い状態・
✔︎ 低HDLコレステロール血症:いわゆる善玉コレステロールが低い状態。
日本動脈硬化学会が定める脂質異常症の基準は
✔︎ LDL≧140 mg/dL
✔︎ トリグリセリド≧150 mg/dL
✔︎ HDL<40mg/dL
と定められています。
LDLが180mg/dL以上とかなり高い値であれば、家族性高コレステロール血症という特殊な脂質異常症が疑わしいです。
脂質異常症だと何が悪いのか?
脂質異常症は生活習慣症病であり、治療しないと高血圧や糖尿病と同様、心臓や脳の血管障害になりやすいです。
脂質異常症の治療方法は?
1:食事の改善
コレステロールを下げやすい食事を増やしつつ、コレステロールを上げやすい食事を減らします。具体的には
控える食品:
✔︎脂身の多い食品(鶏皮、霜降り肉やひき肉)
✔︎動物脂:ラード、バター
おすすめの食品
・大豆や大豆製品:納豆、豆腐
・魚:青背魚(アジ、サバ、イワシやサンマ)
・緑黄色野菜:ほうれん草、ブロッコリー、トマト、カボチャやピーマンなど
・海藻、きのこ、こんにゃくや果物
・雑穀:玄米や全粒粉パン、そばなど
また炭水化物のエネルギー比率を50-60%程度とし、食物繊維の摂取を増やすのも良いです。
2:運動療法
運動は有酸素運動(ウォーキング、水泳、ジョギングやサイクリングなど)を1日30分以上で最低週3回(できれば毎日)することで脂質異常の改善効果があります。
下図は運動強度の目安です。中強度を目安に運動をしましょう。
運動療法により
中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを上昇させる効果が報告されています。
4:薬物療法
LDLコレステロールの値がかなり高い、または心筋梗塞や脳梗塞にかかったことがある場合以外では、通常、生活習慣と食生活の改善をしてもコレステロールが低下しないときに薬物療法を開始します。
薬物療法は主に
✔︎ スタチン製剤(リピトールやクレストール)
✔︎ 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(ゼチーア)
を使用します。これらの薬にアレルギーがある、または副作用で使用ができない場合に使用される薬として
✔︎ 陰イオン交換樹脂(コレスチラミド)
✔︎ プロブコール
✔︎ PCSK9阻害薬
といった薬がありますが、スタチン製剤とエゼチミブでほとんどのかたの治療ができます。
コレステロールはどこまで下げればいいのか?
コレステロールをどこまで下げるかの目標値にかんしては、一次予防と二次予防という考え方をまず理解する必要があります。治療はおもに悪玉コレステロールである、LDLコレステロールの値を下げることを目標にします。
-
一次予防
病気になったことない人が、病気にならないよう予防すること -
二次予防
病気になったことのある人が、同じ病気にかからないように予防することです。
脂質異常症と最も関連がある疾患は心筋梗塞や狭心症、または脳梗塞です。これらの疾患にかかったことがあるかたは、脂質異常症を治療する目的が二次予防となり、LDLコレステロール 100mg/dL未満(一部のかたは70mg/dL未満)が治療目標となります。
また糖尿病、慢性腎不全、末梢動脈疾患があるかたは高リスク群として、LDLコレステロール値 120mg/dL未満が治療目標となります。
それ以外の方は、年齢や血圧、喫煙の有無などを総合的に判断して、LDLコレステロールが140 mg/dLまたは160 mg/dL未満が目標となります。