「たかがむくみ」と放置していませんか?
そのむくみ、実は心臓や腎臓、肝臓からのSOSかもしれません
「夕方になると足がパンパンになる」「朝起きると顔がむくんでいる」「指輪が抜けにくくなった」…。多くの人が経験するむくみ(浮腫)は「疲れているだけ」「一時的なもの」と安易に考えられがちです。しかし、そのむくみの背後には重大な病気が隠されていることがあります。特に、心臓、腎臓、肝臓といった重要な臓器の機能が低下しているサインであるケースも少なくありません。
当院は循環器内科として、むくみの原因が心臓や血管の病気である可能性を専門的に精査し、的確な診断と治療を提供しています。また心臓以外の原因によるむくみについても適切な検査と診断を行い、必要に応じて他の専門医療機関と連携し、治療へとつなげて参ります。
むくみとは?なぜ起こるのか?
むくみは体の組織の間に余分な水分がたまってしまう状態です。私たちの体は血管の中を流れる血液の水分と、細胞と細胞の間を満たす組織液の水分が常に一定のバランスを保っています。このバランスは「血管内の圧力」と「血管内のタンパク質濃度」によって絶妙に保たれています。
しかし以下のような原因でこのバランスが崩れると、水分が血管の外に染み出しやすくなる、または血管内に戻りにくくなったりし、むくみとして足や顔、手に現れます。
1:心臓のポンプ機能の低下
2:血管内のタンパク質(アルブミン)が少なくなる
3:血管の透過性が亢進する(水分が血管の外に盛れやすくなる)
4:リンパの流れが悪くなる
一時的なむくみであれば、長時間の立ち仕事やデスクワーク、塩分の摂りすぎ、冷えや睡眠不足などが原因となることが多いです。しかし「なかなかむくみが引かない」「全身がむくむ」「むくみとともに他の症状(息切れや倦怠感)がある」といった場合は病気のサインである可能性が高く、専門医による診察が必要です。
むくみの背後に潜む、心臓・腎臓・肝臓の病気
むくみは病気の診断において非常に重要な手掛かりとなります。特に、以下の3つの臓器の障害はむくみを引き起こす代表的な原因です。
むくみの原因となる病気
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心臓疾患
・心不全
・不整脈
・弁膜症
・心筋炎など -
血管疾患
・下肢静脈瘤
・静脈血栓症など -
肝臓疾患
・アルコール肝硬変
・ウィルス性肝硬変
・非アルコール性脂肪肝
・自己免疫性肝疾患など -
腎臓疾患
・腎不全
・糸球体腎炎
・ネフローゼ症候群など
心臓が原因のむくみ
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っています。このポンプ機能が低下すると(心不全)、全身を巡った血液を心臓に戻す力が弱まり、血液がうっ滞(滞る)します。その結果、重力の影響で足の静脈に血液が溜まり、血管内の圧力が高まることで、水分が血管の外に染み出しやすくなります。
・主な症状:初期には足のむくみ(特に足首)が両側に出現し、進行すると全身のむくみに加えて息切れ、動悸、倦怠感が出現します。
特徴
✔足のむくみが両側に現れることが多い
✔指で皮膚を押すと、くぼみが残り、なかなか元に戻らない
✔夜寝る時に足を高くしても改善しにくい
心不全の早期発見のために:「最近階段を登るのが辛い」「少し歩いただけで息切れがする」というような症状を伴うむくみは心不全のサインかもしれません。当院では問診、診察、胸部レントゲン、血液検査、心電図や心臓エコー検査などを用いて心臓のポンプ機能を詳細に評価します。
腎臓が原因のむくみ
腎臓は体内の余分な水分や老廃物を尿として排泄する重要な臓器です。腎臓の機能が低下すると体内の水分や塩分をうまく排泄できなくなり、体に溜まってむくみを引き起こします。また腎臓の病気の中には血液中のアルブミンというタンパク質が尿中に漏れてしまうネフローゼ症候群という病気があり、血管内の水分を保つ力が弱まって、むくみが出現することがあります。
主な症状:顔や手、朝のまぶたのむくみ、全身のむくみ、尿の泡立ちや倦怠感など
特徴
✔顔や手、特にまぶたのむくみが出現することが多い
✔尿が泡立つ
腎不全の早期発見のために:尿検査や血液検査で腎機能の異常が指摘された場合は放置せずに詳しく調べる必要があります。当院では心臓だけでなく腎臓の機能も血液や尿検査で確認し、必要に応じて腎臓の専門医と連携します。
肝臓が原因のむくみ
肝臓は血液中のアルブミンというタンパク質を合成する重要な役割を担っています。肝硬変などで肝臓の機能が低下するとこのアルブミンの値が低下します。このことにより血管内の水分を保つ力が弱まり、水分が血管の外に漏れやすくなってむくみを引き起こします。
・主な症状:足のむくみに加えてお腹の張り(腹水)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、食欲不振、倦怠感などを認める。
特徴
✔足のむくみとお腹が同時に張ることがある
✔横断の症状が見られることがある
肝臓病の早期発見のために:健康診断で肝機能の異常(AST、ALT、γ-GTPなど)を指摘された場合は肝臓病の可能性があります。むくみが出ている場合はすでに病状が進行していることも考えられるため、早めの受診が重要です。
当院でのむくみの診察の流れ
むくみの原因は多岐にわたるため、まずはその原因を正確に特定することが重要です。
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1.問診と診察
むくみがいつから始まり、どんな時にひどくなるか、他の症状がないかなどをお伺いします。 -
2.検査
・血液検査:心臓、腎臓、肝臓の機能、貧血の有無や血液中のタンパクの量を調べます。
・心電図:不整脈や心肥大の有無を確認します。
・胸部レントゲン検査:心臓の大きさや肺にお水がたまっていないかなどを確認します。
・心臓超音波検査:心臓のポンプ機能や弁の狭窄や逆流を観察します。
・血管超音波検査:足の静脈に血栓がないかを確認します。
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3.診断と治療方針の確認
問診、診察と検査結果をもとにむくみの原因を特定します。その上で患者さん一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせた治療方針をご説明いたします。必要に応じて他の専門医療機関と連携して治療を進めていきます。
こんなむくみは要注意!
以下のような症状がある場合は、早めに当院までご相談ください。
・むくみが数日経っても改善しない
・両足だけでなく、顔や全身がむくむ
・むくみとともに息苦しさや動悸、胸の痛みがある
・押した部分のくぼみがなかなか戻らない
・尿の泡立ちが見られる
・尿の量が減った気がする
・食欲がない、倦怠感が強い
・黄疸がある
まとめ
「たかがむくみ」と安易に考えず、「もしかして病気のサインかも?」と考えることが大切です。ご自身の体の声に耳を傾け、気になることがあればお気軽にご相談ください。